海外赴任者向けの情報冊子、「ただいま日本」は一時帰国や本帰国を目の前にした衣食住、子女教育、引っ越しのノウハウのイロハが掲載されたフリーペーパーです。この度「初夏から秋の号」に「これから帰国する子どもは、本当に日本の教育についていけるの?」という切り口で取材を受けました。
🍀記事はこちら「これから帰国する子どもは、本当に日本の教育についていけるの?」🍀
2020年に行われる大学入試改革によって、知識量や技能の高さよりも「自ら課題を見出し解決する能力」が求められるようになります。また、人工知能(AI)の進化で今の職業の半分以上がなくなるともいわれており、今後はより一層自分で考えて判断し、表現する力が必要となるでしょう。まさに時代のターニングポイントを迎えている今、それらの能力を引き出す教育を実践し、驚きの成果を挙げていることで各種メディアに注目されているのが東京インターハイスクールです。その教育とはどのようなものなのか。Academic Directorの高橋有希子さんに詳しく説明してもらいました。「これから帰国する子どもは、本当に日本の教育についていけるの?」と心配するご両親にとって、目からウロコの内容です。
帰国子女の気持ちも、親の不安もわかるからこそ
実は、私も帰国子女です。小学校6年生から7年間オーストラリアにいました。中学までは日本人学校でしたが、高校は現地校に入学。ほかに日本人がいなかったこともあり、価値観を分かち合える友だちがいなくて学校に行きたくなくなりました。親以外に誰も自分を評価してくれる大人がいなかったので、とても孤独な3年間でした。それで日本の大学に進学しましたが、周囲との微妙なズレを感じる日々でした。その理由がはっきりわかったのが、就職後の新入社員研修です。画一的に教えられることばかりで、「まったく個性を見てくれない」という思いが募るばかり。「多様性を認める学び」の必要性を、私自身が強く感じていました。ですから、東京インターハイスクールの前身であるアットマークインターハイスクールの立ち上げメンバーに誘われたとき、多様性を受け入れる教育理念に心から共感できたのです。また、私は3児の母でもありますが、子どもが0歳、3歳、5歳のとき夫の海外赴任が決まり、アメリカに4年間駐在しました。アイデンティティに悩む帰国子女の気持ちだけでなく、海外で子育てをする不安も経験したことが、東京インターハイスクールで教育に携わるうえでのエッセンスとなっています。
決定権を持つのが生徒だから自立心が自然に養われる
東京インターハイスクールは「教えない学校」です。テストもありませんし、学習内容は一人ひとりの興味・関心や進路、習熟度によってオーダーメイドに構成します。いわゆる先生はおらず、生徒には「学習コーチ」という個別担任がつきます。「学習コーチ」は、メンターとして生徒に助言する役割を担っています。生徒は東京・渋谷のスクールに通うこともできますし、オンラインで世界中どこからでも受講できますが、週1回程度は必ずスカイプで面談をします。テストがない代わりに、各自の学習目標に沿った学習成果物を提出することで単位認定をしますが、その進捗状況を確認するのです。また、単位取得には定められた学習時間をクリアする必要がありますが、それは生徒がオンラインの学習管理システムで報告をします。自主申告なので、客観的に時間を測定することはできませんが、学習成果物の進捗を見ればどの程度取り組んでいるかは一目瞭然ですから、スカイプ面談でマネジメントするというわけです。ここで重要なのは、学習目標を決めるのは担任の「学習コーチ」ではないということです。決定権を持つのはあくまで生徒で、「学習コーチ」はそれを尊重し、生徒が主体的に取り組めるようサポートするのが役割です。期限も自分で決めますので、できなかったら自分の責任。先生がいなくてテストもないので「あまり勉強しない学校なのでは」と思われがちですが、「自由って実は大変なんだね」という声もあがるほどです。ただ、社会に出れば当たり前のことですから「今慣れておけば後で楽だよ」と伝えるようにしていて、卒業生は大学でも社会でも非常に頑張っていますし、その姿を見た親御さんたちからは「私が入りたいくらい」といわれることも少なくありません。
コーチングの根幹にあるのは
「本当に子どもが自分で目標を決められるの?」と思う方もいるでしょう。もちろんただ聞くだけでは、一人ひとりに合った目標は引き出せません。そのために私たちが実践しているのが「コーチング」です。通常の学校で行っているのは「ティーチング」ですが、「知らない」生徒に教えることが前提なので、どうしても目線が上からになります。「コーチング」の根幹にあるのは「この子には限りない可能性がある」と信じること。本人も気付いていない強みを引き出すための声かけをしていきます。たとえば、小中学校9年間不登校で、パソコンの前にも座れなかった女子生徒がいました。1年間手紙を送り続けて少しずつ話せるようになったところで「何をするのが好き?」と聞いたところ、洋服のデザインがしたいということで、ある賞に応募させたところ佳作になったんです。それで自信がついたところで、本格的に型紙をつくるには計算できないと、ということで算数に取り組めるようになりました。彼女は4年間かかりましたが無事卒業し、AO入試で成蹊大学の英文科を受験したんです。面接試験で「小学校の英語教育をどう思いますか」と聞かれ、「不登校だったからわかりませんが、ここまでこういうことを考え、学んできました」と答えて面接官全員から拍手を浴び、見事合格しました。そういった事例が本校には多数ありますので、こちらが本当に信じて「どうしたい?」と根気強く聞いていけば、どんな子でも自分で答えを導き出すことができると確信しています。
不安な子の自尊心をつぶさないよう現地でしかできない体験を大切に
子どもさんの海外生活が長いと、「日本の勉強に遅れないように」と焦りがちです。でも、私自身の経験からも、現地でしかできない体験を大切にしていただきたいと思います。日本での勉強は、その気になればあっという間に追いつくものです。それよりも、体験を積み上げてその子にしかない強みを大切に守るような環境を整えてあげてほしいですね。そうすれば、どんなことがあっても自尊心がつぶれることもなく、アイデンティティが確立できていろいろな人とつながっていけます。大学入試改革が行われるように、日本もようやく多様性を重視した教育が導入されていくようになります。弱みを責めるよりも、強みを伸ばす。そのためのお手伝いを「コーチング」を通じて行っていくのが、私たち東京インターハイスクールの取り組みです。世界中どこにいても受講できますので、ぜひ興味をお持ちになったら気軽にお問い合わせをしてみてください。
東京インターハイスクール
東京都渋谷区に所在