主に発達課題を持つお子さんのための自立支援を「療育」といいます。その療育現場にアナログなボードゲームを使ってコミュニケーション力を向上させる試みがあります。ボードゲームを通して信頼関係を構築したり距離をぐっと縮めることができるのです。ゲームは子どもだけでなく会社でアイスブレーキングの一つとして会議前に導入することもできます。ご家庭で純粋にゲームを囲みながら弾む会話を楽しむのもはもとより学校でも使用できるものなのです。ゲームの勝ち負けを味わい、自分の気持ちにラベリングをして表現する方法や感情をコントロールする、相手のことを思いやったり協力したり、信頼関係を築く、、、、などなどボードゲーム遊びを通して学べるソーシャルスキルはたくさんあります。
どうしても会話の突破口が見つからない思春期のクライアントのために実際にボードゲームを使って療育をされている先生よりご紹介いただきました。ピン!と来たボードゲームはぜひご家庭でも一つ二つ購入して遊んでみてください。ソーシャルスキルを育む第一歩はまずは楽しく、ご家庭から。8種類の選りすぐりをご紹介します。
1:てつがくおしゃべりカード
「子どもたちへ50の哲学の問い」という副題のカードゲーム。もともと、オランダの教育法の一つ「イエナプラン」で取り入れているゲーム。「何が普通かを決めているのは誰?」「悲しみはスイッチで消せるように消せる?」「泥棒を好きになれる?」など、今大学入試改革で真っ先に取り入れられている「答えのない問い」を答えていくカードです。いろいろな意見が出てOK。多様な価値観を受け入れ、肯定し、承認するのにぴったりです。絵カードバージョンもわかりやすいです。
2:ドイツ製 HABA Zitternix スティッキー
青、赤、黄色、太さの違う棒を束ねてリングの中に入れて立てます。崩れないように一本ずつ抜くという一見簡単なゲームです。飽きたらやめていいよ、、と声をかけると集中力が途切れがちな子どもも安心して遊ぶことができます。一本ずつ抜くという指示が中々守れずにたくさん抜いてしまう傾向のある子、おとなしくてスティッキーを倒すとトラウマになってしまいそうな子、手を使うので微細運動の練習にもなります。とる順番を色別で決めたりして集中力を高めたり子どもの性格を観察するのに最適です。大人の会社の会議のアイスブレークに導入して盛り上がるという話も聞きました。
3:Dooble Kids
一見カルタのようなゲーム。スピードや観察力、瞬発力や反射神経を養うことができます。同じ動物がいたら手持ちのカードを出していき、手持ちがなくなったら勝ちというゲーム。同じ色の動物を使っているため認知の訓練にも。間違えた場合は「ちょっと違うね」という言葉がけではなくて「ちょっと似ているね」といってみて。
4:窓ふき職人
たくさんの窓が描かれているカードがいくつか並ぶ。真ん中のカードを引いて表示されている□と同じ大きさのものを素早く選ぶ。一つの窓には2人までしか選べないため、スピードや、必ず勝つ友人の真似をするなど性格が表れる。意外と大きさってわからないもので必死になって遊びます。
5:Captain Rhino
弾いたカードに従って上に上に積み上げていくゲーム。途中で壊したくなる衝動が出てきやすいゲームです。まずは環境設定から。「8段を目指しているので真剣に参加したい人だけ参加してください~!」と始める前に声掛けを。自信がなかったら見ているだけもOK。崩したい衝動は、自分の番で崩れてしまうかもしれないという不安から。それでも「次の時には自分がやりたい!」と思ってもらえるような声掛けやアプローチは大切です。大人が「失敗」を見せるためわざと崩して見せたりする。それでもケロッとしていると失敗してもOKなんだ、と子どもは学ぶ。ゲームでどんどん失敗しよう!!
6:Bounce OFF
ボールをテーブルにワンバウンドさせてケースに収めていくゲームなので聴覚過敏のある子はイヤーマフをしても参戦したくなるようなゲーム。めくったカードのボールのパターンを再現するためにどこにバウンドさせればいいか盛り上がります。小さい子には何バウンドしてもOK。ボールは明後日の方向に行ってしまうこともある。落ちたボールを拾うと感謝される。教室で消しゴムが落ちていたら拾ってあげる。そんな日常の訓練にも、ボールを目で追うのでビジョントレーニングにもなります。
7:ThinkのGravity Maze
赤のキューブがゴール。青がスタート。水道管ゲームの立体版。パチンコボールをスタートからゴールまでスムーズに流れるようにつなげていくゲーム。平面から立体を起こす。玉の流れを見ることで物理の原理につなげる意図もある。パターンが得意な子供には2セット購入して拡張することも。球を飲み込んでしまわない年齢から遊べます。
8:Fever Dragon
きれいな火山のビーズが引くカードによって爆発する。火山のビーズをドラゴンがそれぞれ取りに行くゲーム。すごろくのようなボードゲームでドラゴン好きにはたまらない。人生は選択の連続。2匹いる手持ちのドラゴンをどう動かしたらビーズにたどり着けるか。誰が一番赤いビーズをゲットできるか。とにかくビーズはキラキラきれい。ずっと触っていたい衝動にかられます。手の感覚にもいいですね。
ゲームには勝ち負けがつきものなので勝負が決まった時の態度もソーシャルスキルを学ぶ貴重な体験になります。負けたときの気持ちをたっぷりと味合わせてあげること。その上で、負けたままではなくて次への希望へつなぐような大人のアプローチが大切です。「もう一回やりたいよね。」と気持ちを代弁してあがる。「あと10分しかないけれど、どうやってみんなを説得しようか?」と集団から離れて一緒に考えてみる。負けてて泣いたままというのも本人の一つの決断なので泣かせておくこともOK。勝ちすぎる子どもには、ひとしきり一緒に喜んだあと、周りを見て、「みんなの表情はどうかな?」と聞いてみる。ゲーム一つでご家庭でも家族全員で囲んでみてソーシャルスキルアップを幼いころから実践。楽しく学びましょう。