前回の記事では、親が進路の選択肢を示す重要性について説明した。そして、通信制の高校進学数は少子化の中でも顕著に増え続けていること、そして全日制の違いを3つの視点から書いた。1:入試方法 2:通学日数 3:学習方法である。今回はより専門的な学びに特化したサポート校について書きたい。まずはサポート校とはどんな学びの場所だろうか?5つの点から紹介したい。1:サポート校の種類、2:スクーリング(通学して授業を受けること)、3:学費、4:そして実際に訪問したサポート校の例、と5:単位取得の方法である。

1:サポート校の種類
サポート校は文科省の定める「高等学校」ではないため単体では高校卒業資格を付与できない。多くの場合は塾や専門学校や教育関連の「学校法人」や「株式会社」が運営している。大きく分けて専門学校が高等部を持つ場合と塾がサポート校を運営している場合について書いてみよう。

☆専門学校が持つ高等部
16歳の年齢という早いうちから徹底的に専門性を学ぶことになる。例えば、ファッション系、IT系、お料理系、漫画イラスト系、音楽系、ダンス系、美容系、最近伸びてきているゲーム系などに特化している。(○○コースと表示する高等学校もある。)
☆塾が運営するサポート校
スペシャルニーズに応えたマンツーマンの指導があったり、底上げ学習を丁寧にサポートするところもある。丁寧なサポートで心のケアもしてもらえるところが多く、進学に特化した塾が運営していれば進学に力を入れることもできる。

2:サポート校のスクーリング
高校卒業資格を取得するためにスクーリングを受ける(通学して授業を受ける)ことが義務付けられている。つまり生徒が普段通う場所はそれぞれのサポート校の校舎(教室)であるが高校卒業資格の条件を満たすために、年に一度5日ほど提携している通信制の高等学校の本校にスクーリングに行くことになる。例えば屋久島や沖縄、北海道、などで合宿をして授業を受けたりして「本校」での課外活動を行う。

3:学費について
専門性を高める実習代、塾の場合は塾のサポート費用が別途掛かるため学費は一般のそれと比べて倍くらいかかる。普通科の通信制高校は就学支援金の額によるが、私立・公立を考えると年間~50万円くらいまでだろうが一方でサポート校は年間で週5回通学であれば100万円前後だ。(他に週1回、週3回の選択肢がある場合は学費もその分安くなる。)ただものは考えようで、専門学校が運営している高等部門は18歳で卒業する際にはすぐにその業界の即戦力として働きに出る場合が多い。実際に訪問したサポート校では9割以上が引く手あまたの就職を果たしていた。つまり、18歳でお給料がもらえるマインドとスキルを養成しながら高校の資格を取るので高等教育学費分を前倒しで支払うと考えることもできる。ここで「自立」できる人間を育てることに特化するという観点で共感した「専門学校が運営しているサポート校」について紹介しよう。

4:サポート校例
訪問したのは学校法人の専門学校が運営している服飾系のサポート校と株式会社立の専門学校の調理系サポート校である。どちらも徹底的な技術指導のため、募集人数は1コース10名~30名前後とかなり少ない。服飾系の発表会で目の当たりにしたのは年齢の異なる専門学校生たちと高校生が一緒に発表をしている姿だった。技術面でも精神面でも温かく丁寧に高等部の生徒たちを学校全体で育てていこうとしている様子が良く伝わってきた。調理系の実習の例だが、古くから「反転授業」を取り入れていた。反転授業とは家で先に動画で実習の予習をしてから、クラスではQ&A方式でモノ作りが始まるという方法で米国では何年も前から注目されてきたアクティブラーニングの手法の一つだ。このような最新の学びをしているサポート校もある。また講師陣が実際に社会の一線で働いている人ばかり採用しているサポート校がある。カフェやレストラン経営をしているオーナーが講師であると在学中から就職先が決まったりすることもあるようだ。 徹底的に技術を習得することは社会に出てからの選択肢の幅が狭まりそうだが、実は専門性を追求することで広がることになる。例えば調理系であれば調理師だけでなく例えばフードコーディネーターやコンビニとのコラボパッケージ作りや商品開発に携わることもできるのだ。高校時代から3年かけて専門性を高めるということは2年で同じ内容を習得する専門学校生よりも技術力が高くなるということを示している。(サポート校就職課担当談)

5:単位取得について
訪問したサポート校では、週3回から週4回の通学の中で実習中心の学び、例えば社会人としてのマインドを含めたプロフェッショナリズムや技術力が行われている。それらは残念なことに高校の単位としては換算されないため、放課後や休み時間、登校日でない日などの時間で高校の単位の学習を自習で行う必要がある。多くが授業の動画を見て、レポートを提出して、テストを受けるという流れである。サポート校で単位取得のサポートをしてくれるところもあれば、提携している高校に週1回だけ通ってそこで単位取得のサポートを受ける場合もある。ようは高校と専門学校のダブルスクールのようなイメージだ。

専門性に特化したサポート校を訪問して感じたのは、好きで仕方のない分野が子どもに既にある場合には検討したらよい。ようはその道の「職人」になりたい人には開かれた道である。実際に何年も前からその学校説明に参加したり、中3に入ったらすぐに出願をしたりする生徒がいるようだ。気が付いている人は気が付いている。早くから得意分野を伸ばし、それが自立につながっていくという観点においては専門学校の運営している高等部は、「コミュニケーションも学びもまんべんなく」を目指してきた日本の教育の風穴となる可能性もあり得るのだ。