
学習スタイル認定コーチ養成講座18期が修了しました。
今期も学びのマインドセットからスタートし、全16回の間経験学習サイクル「学びー振り返りー実践」を辿って自分と学びの探究の時間となりました。
「学習スタイルとコーチングでWell-beingな社会を作りたい」という思いで続けています。
これまで「学習スタイル診断」について多くの誤解を招いている様子もあり、今日は養成講座のご報告ではなく、「学習スタイル」についての私の思いを共有します。
「セルフポートレート™️(学習スタイル診断)」は子どもを“分類する”ものではありません。
——未来の学びに必要な「気づき」の道具としての再定義のツールです。
教育の現場で「学習スタイル診断」という言葉が出てくると、「子どもをタイプ分けするの?」「ラベリングになってしまうのでは?」「科学的根拠がないと聞いたことがある」といった声をいただくことがあります。
私自身は、1999年にアメリカでこの手法と出会い、オルタナティブ教育で18年間実践をした後に、活動を日本の教育現場に広げ、子どもたち・保護者・先生方・企業研修の参加者など、あらゆる立場の方々とこの診断を共有してきました。その過程で強く感じるのは、「学習スタイル診断=固定化」「診断=分類」と誤解されている場面が多いということでした。
私たちはオンラインの無料テストを受け、「あなたのタイプは〇〇です」と画面に表示されると自分を理解した気持ちになっていますが、マインドフルラーニングが世の中の教育現場や人材育成の場で使っていただきたい「セルフポートレート™️(学習スタイル診断)以下、SP」は、全く違う性格のものです。
SP(学習スタイル診断)は、子どもを“決めつける”ためのものではありません。
むしろ、“その子らしい学び方”に気づき、対話し、選びなおしていくための、問いの出発点なのです。
学習者を支える大人はCoachやファシリテーター、となる必要があり、養成講座でその視点を育んでいます。

「今の私は、こういう学びがしっくりくる」
私たちが扱っているのは『セルフ・ポートレート™』という学習スタイル診断のツールです。これは、学習者の学習スタイルを以下のような多面的な視点から見ていきます:
- 気質(エネルギーの向け方、意思決定の傾向など Gorlayの理論)
- 優位感覚(視覚・聴覚・身体感覚など MBTI理論)
- 学習環境(音・光・座る場所・静けさなど Dunn&Dunnの理論)
- 興味関心(学びの持ちベーター)
- 才能(MI理論をベースにして12に分類)
これらの要素をもとに、自分の「今の学びやすさの傾向」を知ることができます。
重要なのは、もともと個人が持って生まれたものの他に、発達段階や学習環境、学びの内容によって“変わりゆくものもある”という前提であるということです。
診断は「あなたはこういうタイプです」と決めつけるものではありません。
むしろ「今の私は、こういう環境や関わりの中で学びやすいと感じているんだ」と、その人自身が内省し、言語化するきっかけになる、周りが認識することでよりよいサポートができることを目的としています。
内省をまずは大人の私たちから始めたいという思いで養成講座を開催しています。

学習科学の知見をふまえて——「効果がない」は本当に終点か?
たしかに、「学習スタイルは効果がない」と指摘する研究もあります。
とくに有名なのが、Pashler et al.(2008)によるレビュー研究です。
そこでは「学習スタイルに合わせた指導が、明確に学習成果を高めるとは言えない」とされ、
“メシング仮説(Matching Hypothesis)”の根拠の弱さが示されました。
この指摘を始めとする論議は私自身もアセスメントを作った創業者のMariaemmaとVictoriaから聞いていましたし、調べていく過程で理解しています。
「学習スタイルに合った教え方をすれば、成績が上がる」という単純な因果を信じているわけではありません。
本当に大事なのは、「どのスタイルが正解か」ではなく、「どうやって自分の学び方を学習者が選び取っていけるか」ではないでしょうか。
この視点は、これからの教育が重視している以下のような知見と深く重なります。
- メタ認知(自分の学習を知り、調整する力)
- 自己調整学習(Self-Regulated Learning)
- 学習方略の選択と試行錯誤
- 構成主義的学習観(学びの意味を自分で構築する)
つまり、学習スタイル診断を“分類のための科学”として使うのではなく、
自己理解を深め、学びを対話し、省察し、選びなおすための実践的ツールとして使う。
これが、私たちマインドフルラーニングが目指している「学習スタイル診断の再定義」です。
教師の“まなざし”が変わると、学びの風景が変わる
学習スタイル診断を使った授業や面談、コーチング研修の中で、
「先生の見方が変わって関係性が良くなった結果、子どもが夢中に取り組むようになった」、「子どもの理解の仕方が見えてきた」といった言葉を何度も聞いてきました。
ある先生は、「今まで“話を聞いていない”と思っていた子が、実は“身体で動きながら考えるタイプ”だと知って、授業中の見方が180度変わった」と話してくれました。
別の先生は、「なぜこの子が集中できなかったのかが、診断を通して“音に敏感だった”とわかって、安心できる環境をつくっただけでその子が驚くほど変わった」と言います。
こうした体験のひとつひとつが、教師の“まなざし”の変化につながり、
その変化がクラス全体の学びの質を変えていくのを、私は現場で何度も見てきました。
この教師の「A-ha!moment」をマインドフルラーニングを学ぶことで日本全国で起こしたいと願っています。

子どもたちは知識伝授をして「できる」からより深い「わかる」へ
VygotskyのZPD(最近接発達領域)の理論では、人は他者との関わりのなかで、自分ひとりでは届かなかった学びへと進んでいけるとされています。
学習スタイル診断は、その“関わり”を生み出すきっかけになります。
「私はこういうときに集中できるんだ」と子どもが気づくとき、
「この子にはこういう関わりが合っていたのか」と教師が変わるとき、
学びは単なる知識の伝達から、「わかる意味を自分でつくっていく」プロセスに変わります。
子どもたちは「教えられたことがわかった」ではなく、
「できた体験を通して、意味を見つけ、理解していく」——そんな学びの姿に近づいていきます。
それを支えるのが、学習スタイルという“言葉になりにくい違い”を可視化し、共有し、対話できるようにするツールなのです。

最後に——分けるのではなく、ひらくために
教育の世界に「スタイル」や「傾向」といった言葉が入ると、どうしても「分ける」「分類する」という方向に議論が向かいがちです。
学習スタイル診断は、子どもを分けるのではなく、自己理解・他者理解・学びの選択肢・未来への可能性を“ひらく”ツールなのです。
子どもたちが「自分はこういう学び方が心地よい」と感じること。先生が「この子にはこういう可能性がある」と気づくこと。親が「うちの子ってこんな一面があったんだ」と知ること。
そこから、これまでになかった関わりが生まれ、新しい学びの風景がひらいていく。
「学びの多様性」という言葉が一人歩きする時代に、
それを“具体的なかたち”で支える道具が、学習スタイル診断であり、セルフ・ポートレート™なのです。
私はこの診断にコーチングという手法をつけて教えています。
学習スタイルコーチ養成講座の19期は10月下旬スタートを予定しています。平日(火・水・木のどれか)の20時スタートです。残席一名。
お申し込みお待ちしています。無料ガイダンスはこちらから

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