10月上旬の3連休に名古屋で行われた「日本教育心理学会」の総会。心理学会の中でも「教育」に特化しているともあり、多くの熱意のある先生方と出会いました。一般的には「学会」というと研究の発表が主旨なので仕方のないことなのですが、その研究をどのように現場に活用していくか、生かされるかという話まで聞くことは少なく、現場の第一線で今まさに多様化している子どもたちのニーズに対応する立場としては物足りなく思うこともままあります。そんな中で2日目の総会の懇親会で声をかけてくださったある県立高校の社会兼教育相談の先生にはすっかりと魅了されました。

先生は歴史が専門なのですが臨床心理士の資格を取った流れで教育相談も受け持つようになったとのこと。長らく県立高校の先生として公立の学校で働いてきましたが、個々を伸ばすような理想とするとっとちゃんの「トモエ学園」のような教育機関には程遠いとおもっていらっしゃるとのことでした。そして学校教育の在り方を考えるきっかけとなった書籍を紹介してくださいました。「ジョージ・H・リービスp79-p81 第 2 章自分をみつける『こころのチキンスープ 愛の奇跡の物語』ダイヤモンド社,1995」の「動物の学校」です。一部内容をご紹介します。人はそれぞれ全く違う得意分野があるのに、「できないこと」を正そうとする学校教育について考えさせられます。

「動物の学校」一部抜粋です。(レファレンスは上記に記載済み)
「めまぐるしい時代の変化とともに,動物の国も社会問題が急激に増えました。そこで,動物たちは思い切った対策を取ることにしたのです。まず学校を作り、かけっこ、木登り、水泳、飛行を子ども達に教えることにしました。そして管理の手間を省くために、全科目を必須と定めたのです。アヒル君は水泳が得意でした。正直なところ先生よりも上手だったと言えます。でも飛行の成績はやっと合格点というところで、かけっこの成績は良いとはいえません。そこで放課後もかけっこの練習に励んだのです。ところがそのせいで水かきはひどく擦りきれてぼろぼろになり、得意の水泳でも平均点しか取れなくなりました。でも学校の方針では平均点さえとればよいことになっていたので、当のアヒル君が自信をなくして落ち込んでいても気にとめる者はいませんでした。

ウサギさんはかけっこで最優秀の成績をとっていましたが、水泳が苦手だったので厳しい補習授業でしごかれ、すっかり神経衰弱になってしまいました。リス君は木登りが得意でしたが、学校で教える飛行はうまくできませんでした。なぜなら、新しいカリキュラムのもとでは下から上に飛ぶという、今までとはまるで逆の飛び方をしなければならなかったからです。おかげですっかりストレスがたまり,過度の練習で足がけいれんするようになりました。こうなると,最も得意とした木登りでさえも平均点しか取れなくなり、かけっこにいたっては赤点というさんざんな結果に終わったのです。

ただひとり、泰然自若としているのはワシ君でした。学校きっての問題児でしたが、木登りにかけてはだれも右にでるものはいませんでした。先生が何をいってもどこ吹く風と、いつも自己流のやり方を通していたのです。こうした生徒の中で,特異な存在はウナギさんでした。泳ぎが抜群にうまく、かけっこ、木登り、飛行もまあまあといったところで、全科目の総合点でトップになりその年の終わりには「最優秀成績者」として学校総代に選ばれたのです。でも学校の方針に不満を持つ動物たちもいました。、、続く」

どこかで聞いたことのあるような光景ではありませんか?私の提案は、学校や教育機関にお任せするのではなく、親の私たちが子どもの良さに気が付き、しっかりとその子にあった教育方法を見つけていくこと。一人一人の違いを「尊重」し「伸ばしていける」子育てをしたいものです。幼いころに自分の気質をたっぷりと満喫した子どもは成長すれば、自分を認めてもらうのに躍起になる必要はなく、きっとどんな困難にもうまく立ち行けるように立ち止まり、考えることができる自立した大人になるに違いありません。

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