時は1999年。私が証券会社の総合職を3年目で退職して20代でオンラインハイスクールのサポートティーチャー(学習コーチ)になったとき、コーチとして心掛けたことがあります。その一つは「生徒と同じ目線に立つ」という意識でした。当時は生徒のことを「学生さん」と呼ぶようにしていたので、正確に言うと「学生さんと同じ目線に立つ」です。
『生徒とは教えを受ける人』、つまり先生から何かを学ぶ人という意味があったので自ら学ぶインディペンデントラーニングを志す、生きた学びをしているオンラインハイスクールの高校生は『学生さん』と呼んでいました。さん付けは株式会社の学校でしたのでサービスを提供するお客様でもある生徒だったため、そう呼ぶのが習慣になっていました。
『同じ目線に立つ』はこれまでの経験値の中にあった先生と生徒の関係性や親子関係からは応用できるものがなかったので自分なりに試行錯誤しました。若気の至りで今思い出すと冷や汗の出るようなたくさんの失敗もしました。第一歩に始めたことは言葉遣いをまずフレンドリーにすることでした。登校がない学校なので活字のやり取りでなれなれしく「そうだよね~」とか「それでどうなの?」とお友達みたいな言葉遣いを試していたこともありました。言葉の音の上げ下げやニュアンスは活字ではうまく伝わりきらないので、それがきっかけになり親御さんから、生徒からもクレームを何度もいただきました。とても痛い思い出です。それ以来活字にする言葉遣いには細心の注意を払うようになりました。自分発信の目線はつい思いが強く手伝わりづらいものです。今では相手が何を知りたいと思っているか、それをどう伝えられるかという目線で表現をすることを心掛けています。
同じ目線に立つためのもう一つの試みはわたしのことを『先生』ではなくて、ファーストネームで呼んでもらうことでした。今でも30代の元生徒に会うと「ゆっこさん」と呼んでくれる生徒が何人もいます。いつしか私自身が30代、40代になり生徒の親御さんの年代となり、運営/管理側に周り、肩書が独り歩きして、そして、「高橋先生」と呼ばれることが増えました。わたしはそれでも実は「ゆっこさん」と親しみを込めて呼んでもらうことが好きです。それはきっとその昔に信頼してもらった先生からそう呼ばれていたことや、心を許していた友人たちがそう呼んでくれていたので、距離が近い気がするからなのでしょう。呼ばれる名前って大事ですね。
コーチとして心掛けた第一歩は細心の注意を払った表現と呼んでもらう名前の2つでしたが経験を積み重ねるうちに、それらはほんの小手先のことだと気が付きました。同じ目線というのはスキルではなく『相手を尊重して受け入れる』という在り方そのものだということが分かってきました。あり方を整えていくためには自分のことを知り、セルフケアも大切だということに行きついたのは40も半ばです。
それらをぎゅっと詰め込んだエッセンスを学習スタイル認定コーチ養成講座として28時間前後の講座にしています。コーチとして心掛けたことはまだまだ他にもありますので追々記事にしてご紹介できればと考えています。*お陰様で4期生・5期生の募集は締め切りました。この講座を通して思春期の時にこんな大人がいたらよかった、を体現できる大人が増え、子どもが生き生きと自分らしく育つ社会になることを願いながら活動を続けています。