2023年12月 に公開した「学習スタイルの気質分析(https://mindfulkosodate.com/20231218-2/)」にはたくさんの反響をいただきました。

今回は、2つ目の項目である「優位感覚=インプットのタイプ」について、日本人と世界の比較結果と、それに対する見解を紹介します。

米国が実施したオンラインテストのデータ66,000人分に基づいていますが、 それに加えて2023年12月に取得した日本人2,600人のデータを分析しました。

セルフポートレート™︎の「Modalities(インプットタイプ) 」では学習や集中時に使われる8つの優位感覚を測定しています。

▶︎まずは「優位感覚=インプットタイプ」とは何か、と言う説明から。

私たちはあらゆる情報を取り入れる際に、5感を使っています。

視覚、聴覚、触覚運動感覚(以下、体感覚)、嗅覚、味覚です。

例えば、食べ物を口に運ぶ時に「美味しい」と感じるのは味(味覚)や匂い(嗅覚)だけでなく、

人によってはお料理の見た目(視覚)や口に運んで食べてみた食感や歯応え(体感覚)、その時に話していた内容の雰囲気が良かった(聴覚)などがあります。

コーチングで使われる、NLP(神経言語プログラミング)では、VAK(視覚、聴覚、体感覚)と言う3つのコミュニケーションスタイルが、

発達検査などでも子どものVAKがわかるような仕組みのものもあるので、

「視覚派」「聴覚派」といった概念とともにどの感覚が優位か注目をしたこともあるかもしれません。

▶︎マインドフルラーニングのセルフポートレート™︎では、「学習」や「仕事」、「集中する時」に特化した優位感覚で、VAKをさらに8つのタイプに分類しています。

聴覚型(聴覚・発話)、視覚型(活字・ピクチャー)、触覚運動型(全身、記述、スケッチ、触覚ハンズオン)です。

簡単にまとめると以下のようになります。

・聴覚=話、音を聞いて学ぶ

・発話=自らが声に出すことで学ぶ

・活字=文字を読んで学ぶ

・ピクチャー=絵や動画、画像で学ぶ

・全身=動きながら学ぶ

・記述=文字を書いて学ぶ

・スケッチ=絵を描いて学ぶ

・触覚=手を動かしながら学ぶ

*詳しくは著書「放っておいても子どもがぐんぐん学ぶ「学習スタイル」コーチング」P60ー67をご覧ください。

▶︎日本における学習法の分析結果

全体像:

日本の優位感覚トップは発話型、次は聴覚型、3位ピクチャー型、続いて活字型、全身型、記述型、触覚型、スケッチ型の順でした。

全世界の優位感覚のトップは、ピクチャー型、聴覚型、3位が発話型、続いて活字型、触覚型、記述型、全身型、スケッチ型でした。

日本と世界を比較すると、日本は「発話」や「記述」を通じた学習傾向が高く、「全身」を使って学ぶ割合も世界より多いのが特徴です。

一方、全世界と比べると、視覚の「ピクチャー型」や体感覚の「触覚型」がやや低めであることがわかります。

細かく見ると:

・「Verbal(発話型)」が20%、「Listening(聴覚型)」が18%と高い割合を占めています。これは、日本では対話や聞くことを通して学ぶことが重視される文化があるためと考えられます。

・一方で、全世界の傾向と比べると、「Picture(ピクチャー型)」の割合が日本では12%低く、全世界の29%に比べて視覚的に学ぶ傾向が低いことがわかります。

単に日本ではピクチャー型の学び方があまり一般的ではなく、そもそも試していない、と言う可能性もあります。

・日本では「Hands-on(触覚型)」の割合が低いです。モンテッソーリ教育が注目されている理由の一つは、子どもたちの主体性を育む教育であることに加え、小学校までは「教具」と呼ばれるハンズオン教材を通じて学ぶことで、子どもたちが学びと体験を結びつけやすくしている点にあるのかもしれません。このモンテッソーリ教育の教具から、私たちも教材開発や学び方の工夫を学ぶ必要があるのではないでしょうか。

・さらに、「Writing(記述型)」と「Sketching(スケッチ型)」が日本では全体的に高く、特に「Sketching」は全世界の3%に対して8%と大きく上回っています。

これは、日本では文字や図解を使って整理する学習方法が好まれていることを示していると考えられます。

昨年の分析によると、日本人の気質トップは「思索創造」型です。そのため、イメージで考えることが比較的得意だと考えられます。

・視覚の「ピクチャー型」と体感覚の「スケッチ型」は似て非なるものですが、どちらも「画像」などのイメージを通して学ぶという点では共通しています。

これを踏まえると、全世界と比較して日本でピクチャー型(画像や動画を通じた学び)が低いのは、実際にはニーズがあるものの、これまでの教育でこの学び方があまり推奨されていないため、私たちにとって身近でなかったり、効果を実感しにくかったりするからかもしれません。その結果、自然に取り入れる機会が少なくなっている可能性があります。

︎▶︎子どもたちの「気質」とインプット法、「優位感覚」の関連について

ここまで書いて改めて、セルフポートレートを25年間実践・分析してきたものとして、「気質」との関連性について深く考えたくなりました。

セルフポートレートには5つの独立した項目がありますが、実際には各項目同士に関連性があるとされています。私もクライアントの結果を見る際、項目ごとに解説するだけでなく、各項目と全体の関連性を考えながらお話しさせていただいています。

今回の結果で明らかになった、日本人に多い「発話型」と「聴覚型」という優位感覚は、気質でいう「関係影響型」に関連しているように思われます。しかし、昨年の気質分析でトップだった「思索創造型」と「発明型」に関連するハンズオンやスケッチ型が、8つの優位感覚の中で下位2つになっているのは興味深い結果です。

この結果が正しいと仮定すると、日本の教育は子どもたちの「気質(生まれ持った学び方の特性や特徴)」に合った学習法を十分に提供しておらず、子どもたちが自身に合った方法を試す機会が少ない可能性があります。

アセスメントは「自分が学びやすい方法」を受検者が選ぶ形式ですが、これまでその学び方を試した経験がないため、選択肢に入らないケースもあるのではないかと考えられます。

︎▶︎見解

今回の私なりの結論としては、子どもが早いうちに「8つの学び方」を経験し、中学校に上がる頃には「自分に合った優位感覚を使った学び方だと勉強が楽しい」「この方法なら点数が取れる」といった感覚が自然に身についているのが理想的だということです。

そのためには、手前味噌ですが、10月末に開催したワークショップ「子どもにさまざまな勉強法を経験してもらう方法」などを通じて、私たち大人が子どもに向けた学び方の工夫をすることが、一つの道筋になるのではと感じました。

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