子育て、人育てに関わる皆さんには「コーチ」として関わろう、と伝えている。「コーチング」という言葉が教育界でも聞かれるようになって久しいが、それでも「コーチ」として関わろう、と言われてもピンと来る人は一握りだろう。コーチになるには、自分を知ることが第一歩である。開催してきた養成講座や子育て講座、企業研修でもコーチングスキル以前に自身の在り方や自分が大切にしている価値観、自分の気質やコミュニケーションの傾向を発見することから始めている。日本全国の親子に受けてもらいたいと願っている「学習スタイル診断」は自分の学びの傾向や強みが分かるからこそ子どもを尊重できるという視点に立っている。まずは「自分を知る」ことがコーチマインドには大切なのだ。

やみくもにコーチングする例として、例えば人を励ますときに気質や相手の状況によって声掛けを考えないと見込み違いになり、励ますどころか距離が生まれてしまう。夢や目標を見せてもらえた方が頑張れる場合もあればただ寄り添ってほしい場合もあるだろう。承認の言葉にしても、「すごい!」だけで喜ぶ場合もあれば、根拠を示さないと喜べないタイプもいるだろうし、自分が褒められるより自分が影響を及ぼしている活動や育てた人たち褒められる方がうれしいタイプもある。つまり相手のタイプを考えることなく「自分だったらこうしてもらいたい」を基準にして対応をしてしまうのはコーチではない。そこで始めに「コーチ」とは、を簡単に説明した後に具体的に声掛けのヒントになる大切なポイントについて説明したい。

コーチングとティーチング
一般的にティーチングは、教える人と教わる人になるので、目線は上下になりやすい傾向にある。「あなたは知らない人だから、私が教えますという関係になりやすい。コーチングは「答えは相手の中にある」、と心からの信頼から声掛け、関係性が始まるので同じ目線で接する。その人の目標に伴走して物事を整理したり視野を広げるための質問を重ねていくのだ。コーチは一緒に考える人、伴走者なのである。

伴走者として心がける大切なポイント
クライアントと接するときに意識するのは信頼関係の構築だ。信頼関係構築だけで記事が書けてしまうくらい大事なことなのだが、今回はそれ以前のステップの紹介をメインにしたい。それは相手が本当に「コーチング」を受ける状態であるかどうかを探ることだ。例えば新入社員にはコーチングだけでなくてティーチングが必要だろうし、ある程度知識が備わってきたらアドバイスとコーチングを組み合わせるだろう。一番気をつけなくてはいけないのは、クライアントの肉体/精神状態が0以下にある場合だ。悩みが深かったりトラウマがあったり、健康を害してお医者様にかかっている場合は、カウンセリングに切り替える。つまり共感をして傾聴に徹するのだ。目標を掲げたり励ましたりしてはいけない。そして精神的にマイナスではなく0からプラスに上がってきたときに初めてコーチングに入る。そこをどうも混同して、何でもかんでもコーチングをしなくてはとおもって間違った対応をしてしまうことも多いのではないだろうか。ティーチングか、アドバイスか、コーチングかカウンセリングか、、それを考えて対応ができると講座でお話すると、「なんでもコーチングではないのですね」、「コーチングは万能じゃないのですね」と大半の人ははっとする。

まとめ
その人の状態がコーチングだけでない場合は、傾聴と承認が最も重要である。具体的なスキルはまた次の機会に説明するが一番効果的なのは「I message」と言われている、「わたし」を主語にしたメッセージである。「あなたはすごい!」と「あなた」を主語にした言葉ではなくて、「私が助かった」とか、「私も元気をもらった」とか、まずは日常で「私」を主語にしたコミュニケーションの練習をしてみることをおススメしたい。そこから同じ目線で考えることがようやくスタートするのだ。大切なことは状態とタイプに合わせて見極め、I messageを効果的に使うことに尽きる。