「子どもに進学をしてもらいたい大学のトップ3」という記事を書いたところ、その反響は大きかった。これからの時代に必要だとされている教育や子どもに身に着けてほしいスキルについて、もう「偏差値」のための学びではないと多くの教育関係者や保護者は気が付いていることを改めて実感した。
今回は2019年4月1日に行われた立命館アジア太平洋大学(以下、APU)の入学式に20年の多様な学びの最前線にいる教育者として、そして保護者として参列したのでその特色についてお伝えする。大きく分けて4つある。1つはキャンパスツアー。2つ目は入学式。3つ目はAPハウスと呼ばれている学生寮。そして4つ目は折角だからと足を延ばした別府温泉である。
1:キャンパスツアー
夫の実家が九州で中々会う機会がないので入学式前日から向かうことにした。早朝の飛行機で2時間。福岡に到着。実家を弾丸訪問した後に、15時からのAPUのキャンパスツアーに参加した。実は夏にも学校説明会で家族でキャンパス内を見学したのだが今回の大きな目的の一つに、我が家の大学2年生になる長男の視野を広げたいということがあった。
長男も、K大学環境情報学部に入学し、アクティブラーニング的な先駆者の大学なのでその要素を持つ「実学」中心の授業を受けていて、寮に入り、春からはRA(寮長Resident Assistant)を引き受けている。そういう意味ではこれからの時代を先取りした学びには接しているのだが、6000人以上いる在校生のうち半数の3000人が90か国からの留学生という環境で学ぶということを実感してほしかった。そして、そこで学んだ人たちと将来一緒にやっていく可能性もあるということを知って欲しかったという親心である。
さてキャンパスツアーは全26組ほどに分かれ、それぞれ1~2名のAPUの留学生が流ちょうな日本語でキャンパス内を案内してくれる。キャンパスツアーは申し込み時に英語、韓国語、中国語の言語が選べる。私たちにはインドネシアから来た4回生の女子学生と中国から来た2回生の男子学生がツアーに連れて行ってくれた。真っ先に長男が目を見張ったのは広大な敷地のキャンパスである。いかにも学び舎、という建物や雰囲気に感銘を受けていた。海を眺める絶景も素晴らしく、デートスポットになっているとか。
今回の目玉は図書館。「図書館ではしゃべらない。飲食禁止」が標準だろうが、APUの図書室は飲食、ディスカッション、プレゼンテーションの練習OKのスペースや個室まで用意してある。プロジェクターやホワイトボードにアイデアを書きなぐり、活発に議論されている様子が目に浮かぶようだった。(この日は日曜日だったので学生は少なかった。)特に、個室のプレゼン練習は人気で2か月待ちだそうだ。また、経営学を学ぶ学生のための「統計学と数学」を教えてくれるブース、Analytics and Math Centerや英語の文法やライティングを教えてくれるコーナー、日本語をブラッシュアップするコーナーなどが至る所にあった。それらはすべて選ばれた学生がアルバイトとして担当をしている。
インドネシアから来た4回生の彼女は母国語は英語ではないため1年生の頃はよくこのセンターに通って提出するレポートやエッセイを添削してもらって助かったと言っていた。中国人の学生も、流ちょうな日本語で、たった一年でここまで意欲的に学んだのかと思うと感嘆のため息が見学者から漏れる。日本語についてもSALCと呼ばれる言語自習学習センターでテスト前などには多くの学生が英語、日本語、中国語やインドネシア語などを学びに利用しているそうだ。
キャンパスツアーを通して感じたことの一つは、「意欲的な学生には学ぶためのすべての環境とツールが準備されている」ということだ。つまりAPUは入ったら英語や他の言語が自然にできるようになるのではなくて、自らが学ぶ意欲をもって貪欲に学べばスポンジのように吸収できることがたくさん用意されているということである。次は2:入学式についてである。
入学式記事へ続く≫≫