2018年6月20日水曜日 渋谷 学校以外の「学びスタイル」
不登校をグローバルに考える「イクミナル」代表の加藤佳子さんにお誘いを頂き、シューレ大学朝倉景樹先生と共に「日本でいち早く学校外の教育の価値に着目しその分野を開拓してきた立場」としてお話をする機会を頂きました。渋谷まで来られる方はもちろんのこと、全国からZoomというネットシステムのご参加があり、合計30名ほどのフォーラムとなりました。全国レベルでの「学校以外の学びの場」の情報や選択肢について関心の高さを肌で感じました。私がお話しした内容については加藤さんがうまくまとめてくださったのでリンクだけ紹介して割愛させていた空きますが、少しでも多くの方に届けばと思い活動を続けています。♡詳細はこちらから♡
午後からはシューレ大学の朝倉先生が世界のホームエデュケーションについてのお話がありました。まずは世界の教育の動向として学校システムに破綻が来ていること。これは映画「Most likely to succeed」でも「工業化社会」に必要だった、1:満遍なく学ぶこと、1:座っていられること、3:繰り返し同じことができること、をモデルにした120年の学校システムと似た切り口があるのですが、朝倉先生は「学校が軍事教育のため」のものだったという発表をされていました。そして個人の教育を受ける権利を守るために海外ではいろいろな形の学校が認可されているものの、中央コントロール型で、一つのカリキュラム=「教育指導要領」がないと学校を作れないのは日本だけという衝撃な事実も。ここからは不登校、ホームエデュケーション、各国のホームエデュケーション例を流れで説明します。
海外と日本の「不登校」の実情
海外で日本の「不登校」の概念を説明してもなかなか理解が進まないようです。理由は「学校に行かない」解釈の違いです。海外では「不登校」をSchool Refusal(学校を拒否している)と正式名称があり、それらは精神科の領域である「不安神経症」と同意義。日本のように、学校でいじめにあっていけなくなるのは、海外では「自己防衛の権利」として行かないことを選択しているという解釈。学校のでは子どもの良いところが伸ばせないから行かせないも「学ぶ権利」を行使しているという解釈。つまり、学校以外にも学びの場の選択肢があって、それらは権利として選ぶ自由もあり、多様な学びの場が公にも認められているのでしょう。
中3の卒業証書は何を証明しているか?
日本の中学卒業の証書は15歳の3月を迎えたという意味以外の証明ではありません。義務教育とは本来学力を担保するものではないか、ということでイギリスのケースの紹介がありました。5歳から16歳の義務教育を修了する際にGCSEとGCEという学力テストを受験します。そのスコアをもって大学受験が可能になるので、受験の条件に「高校卒業資格が必要」ということがありません。つまり、それらの学力テストを受けるための勉強法やカリキュラムは自由なのです。学校で学びたい場合は学校に行くのもよし。ホームスクーリングで学びたい場合はそれもよし。学校に行ったりホームスクーリングをしたりと自由に教育制度を行き来することができます。学校はあくまでも学力を上げるための一つの方法である、、というスタンスが明確なのです。
学びの主体は家庭から
世界のホームエデュケーション「在宅学習」の呼び名をいくつか紹介します。
- ホームスクール
- ホームエデュケーション
- ホームベースドエデュケーション
- スクールアットホーム
- Child Centered
learner directed
どれも「学びの主体者は子どもである」ということがはっきりとわかる呼び方です。学びの主体は家庭にあり、親がどんな風な子育てをしたいかを考えて自らがその環境を整えていくという考えです。
「不登校で家にいたらホームエデュケーションなのか?」
ホームエデュケーションの定義として不登校との違いは;
- 自分の関心のあることを大切にしていい
- 親など周りの人たちから大切にしてもらえる
- 自分の学びとして応援してもらえると感じながら学びを体験できること
- 学びの基盤を作る・関心のあることに意識的になってよく、どうすれば思い切り取り組めるのか考えていいし、自分だけでやりきれないことを親やほかの人たちに助けを求めて協力を得ながら進めていっていい
つまりそのような学びを学校の勉強に比べて価値が低いということはありません。
「ホームエデュケーションは家の中だけではありません」
家を基盤にしながら社会や世界が自分のキャンパス、外のリソースを活用していいとはなんとワクワクすることでしょう!
スクーリングにこだわらない学びのリソースは以下のようにたくさんあります。 - ホームエデュケーションネットワーク
- ラーニングセンター
- 社会、世界がキャンパス
- だれもが先生
- 自分の関心から始められる
- 体験を通して自分を語らなくてよい
- 博物館、水族館、動物観、公演、体育館、プラネタリウム、プール、公演、映画館、劇場、図書館
つまり社会的資源と比較をして自分を測らなくてよいというメリットと「学校で体育が苦手になった」などと特定の科目にコンプレックスを持ちにくいといわれています。
ここからは各国のホームエデュケーションの例をご紹介
☆イギリスのホームエデュケーション
近代教育成立以前から伝統があり、盛んなネットワーク活動やオルタナティブ教育が根付いている。「世界の三大悲劇」とも「世界の十大小説のひとつ」といわれている小説「嵐が丘」の著者、エミリーブロンテはホームエデュケーション出身。イギリスではオルタナティブ教育との交流があり学校行ったり来たりでき、子供が出入りしているので違和感がない。家庭が満足する教育を常に選べる状態。シュタイナー、学校、ホームエデュケーションなどの選択肢があり、戻りたかったら戻ってもいいし、ほかに行ってもいい。その子どもの都合に合わせた学びが可能となっている。
英国例Aちゃんのホームエデュケーション
両親が生まれる前から「イギリスの教育制度では子どもが幸せにならない」と考えいろいろと調べた結果、ホームエデュケーションを選ぶ。5歳の時にモンテソーリ、ホームエデュケーション、など選択肢を見せてAちゃんに教育方法を選ばせる。お父さんがアニメーターで仕事を辞めてホームエデュケーション。お母さんは図書館司書で2人妹がいる。3姉妹とお父さん。家でどういう風に学びを作っていくかの試行錯誤。初めのうちは子どもが喜びそうで学びそうなおもちゃを集めていたが、しばらくすると子どもは飽きるので数週間で親のネタが尽きた。そこで一週間に一回家族会議を開いて、みんなで5人で相談をしてやることを考えた。「その日何をする?」だと思いつきになってしまうが、1週間単位で考えると演劇のワークショップなど情報が出てくるし子どもの興味が広がる。合唱団入りたいなどの関心が広がった。教会の合唱団で多年齢のお友達が出来て最年少のAちゃんはかわいがられる。同年代のお友達とは学校が終わったら遊びに行く。ホームスクールが「飽きたー」とならないように、お父さんは子どもの興味を一緒に考えていく。そのうち、アニメーターのお父さんの影響で日本のアニメーションに興味を持ち、日本語に興味を持った。地元に住む日本人の留学生に英語と日本語を教えあうLanguage Exchangeを実施。ホームエデュケーションネットワークに家庭で入って情報交換をしている。全英ではホームスクール家族のための雑誌を作っていて活用している。またホームスクールの電話相談ホットラインが充実していて経験者がサポートをし合っている。地域ごとにローカルの家のイベントが共有されて、ホームエデュケーションをしている家族が集える。BBQや博物館いく、スペイン語家庭教師、一緒にシェアしませんか?なども含めて交流の場がネット上でも手に入れることができる。また地域ごとに月に1,2回例会を開いている。活発な情報交換の仕組みが出来上がっている。
ニュージーランドのホームエデュケーション
もっとも世界でホームエデュケーションがしやすいといわれている。国政府からすると学校に行っている生徒には何百ドルもかけていることを考えると経費節減の観点もあるようだ。ホームエデュケーションの家庭にはニュージーランドは年額14万円のサポートが政府から出る。ただしホームエデュケーションの理由書などA4を2-3枚を提出して申請をしなくてはならない。定期的なレポートや近所の虐待レポートがあれば、立ち入りがある。14万円の使用明細の証明ができればOK。家計簿を確認まではない。ホームスクールを教育制度に位置づいている。また当事者同士はSNSつながりあっている。
C君のホームエデュケーション例
ディスレクシア(書字障害)の傾向のあるCくんは農家の家庭の出身。隣近所が遠いためSNSで仲間を探し、人口数千人の村の中にもホームエデュケーションしている人とつながった。月に2-3回くらいの会合がありフリーマーケットのお店を一緒に出したりしている。家族ぐるみの交流をしている。午前中は家で過ごすし読み聞かせの活動が中心。図書館、特に理数系が大好きなので司書と仲良しになり図書館が彼の学校でもあり、コミュニケーションツールとしてipadを駆使している。お母様はニワトリ育てて卵売りお父さん乳牛育てて牛を育てているので動物に興味を持ったCくんはウサギについて調べる。図書館の近くにおばあちゃんの家があり、学校に行っているいとこと遊んだりして過ごしている。
アメリカのホームエデュケーション
公民権運動から発祥し、フリースクール運動とホームエデュケーションを唱えたJホルト、Pモンゴメリー、エドネーゲルが有名。以前はホームエデュケーションは逮捕されていた。パット氏はこの9月に来日予定。ホームエデュケーションの家庭は85万人から200万人いるので一つのマーケットになっている。教材が豊富で開発も活発。全国規模のネットワークではなく州単位でつながりあっている。
Bさんの息子たち例
お母さんは日本人。父はアメリカ人。アメリカで10数年。二人の息子は学校に行かずにホームエデュケーションホームエデュケーショングループを作っている。マサチューセッツ州はホームエデュケーションが多い。家庭同士でお互いに面倒を見合い、夏のキャンプ共同で、数家族単位でフォローし合っている。グループ内にはいろいろな親がいて手芸が得意な母、天文な得意なお父さん、10家庭分の得意分野があって子どもの学びを広げつなげている。ボストンのラーニングセンターにも1時間かけて行っていて、お子さんの二人とも大学に進学している。アメリカではホームエデュケーションをしたことを大学願書に書いて入学できることもある。統一テストのSAT受けなくても受け入れてもらえる枠がある。
カナダでのホームエデュケーション
イギリス連邦の土地柄ですべての州で合法。自分が所属する学区の学校がホームエデュケーション家庭に公費を申請。地区の学校が補助金を管理、支給している。陶芸のろくろや図鑑を家庭が学校に請求し、家庭に支給している仕組みや選んだ学校の施設を空いていれば使ってもいい。NZは14万円渡すだけなのだが、カナダはもう少し使い道に関しては管理されている。
東アジアのホームエデュケーション
韓国、特にプサンが活発で図書館利用が解放されている。台湾でも最も早くホームエデュケーションが行政的に位置づけされていて、今は10万円の年間補助が家庭に出る。東アジアで一番ホームエデュケーションがやりやすいのが台湾だといわれている。孤立を防ぐためにグループホームエデュケーションは3家庭以上で行うこと、と推奨している。中国のホームエデュケーションは公式にはNGだがラーニングセンターは黙認されていて上海にある。
最後に:
日本では可能な教育の選択肢である「ホームエデュケーション」は違法ではない。例えばシュタイナー学校など、地元の公立の学校に籍を置いて通うことは良く起きている。今の日本はほとんどほかの国で起きているような選択をすることは実質可能だが一人でやると非常にやりにくいため孤立をしないで自分のお子さんが望む選択を選ぶ必要がある。米国のオルタナティブ教育の先駆者パットモンゴメリー氏が2018年9月に来日予定。Japan Democratic conference 東洋大学のキャンパスで。
ご家庭がほんの少し賢くなって「子どもの意味のある学び」についてじっくりと向き合う時期がもうそこに来ています。マインドフル子育ての活動が少しでもそんな皆さんのヒントになり、コミュニティとのつながりにお役に立てれば幸いです。