2021年10月13日付のニュースで、文科省が、「小中学生の不登校は19万人以上と、いずれも過去最多となった」と公表しました。児童生徒の「不登校の主な要因」の占める割合として、無気力・不安が47%、生活リズムの乱れ12%、いじめを除く友人関係をめぐる問題11%という分析でした。
2000年から、インターネットハイスクールで高校生たちと接してきた経験からこのニュースに対して2つの問題提議をします。一つは「不登校」という言葉を変えようということと、2つは「要因の本質」が分析結果として表れていないと感じていることです。
1つ目の「不登校」という言葉について。世界的に見ても「不登校」と言う表現をしている国は日本だけ。ホームエデュケーション、ホームスクーリング、アンスクーリング、オルタネイティブ教育など、カタカナばかりですが適切な表現法があります。
不登校という言葉には、「登校をしていない」というもともとの意味から「何らかの理由で登校ができない」というニュアンスで使われています。
誰にでもできることが「できない」というメッセージは、当事者にとって自己肯定感を育みづらく、家族にとっては「学校が合わない子どもがおかしいのではないか」とネガティブな意識を誘発してしまう危険があります。
一方で海外では「不登校」という言葉はありません。ホームエデュケーション、ホームスクーリング、アンスクーリング、オルタネイティブ教育、などの言葉で定義され「積極的に、学校の学びとは違う学びを選択している」という状態を示します。つまり主体的に自分で選んでいるという意味合いが大きくなります。
実際にアメリカの現地校で「子どもはどうも学校の学びでは強みが活かされないからホームスクールを考えているんだ」というような雑談が日常的に行われているのを耳にした経験があります。
2017年に施行された「教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育機会の確保等に関する法律)」で、学校以外の場の重要性について認められています。
親には子どもに教育を受けさせる義務はありますが、その教育の方法を選ぶのは子どもの権利です。今後は「オルタナティブ教育を選んでいる児童生徒」という表現に変えてはいかがでしょうか。
2つ目の登校をしない要因分析ですが、1000人余りの生徒やご家庭と伴走をしていて感じた要因の大きな一つは「学校の学び方が子どもに合っていない」です。
マインドフルラーニングで扱っている学習スタイル診断(Self Portrait™)では、子どもの気質を大きく5つに分類して分析しています。
「計画を立てて」「コツコツと」「整理整頓しながら」「問題集に取り組む」「人の話を聴いて学ぶ」など、従来の学校に合う気質は「組織遂行型 Organized」という一つのタイプです。
それ以外の4つは、「好きなことにずっと取り組んでいたい」「動きながら学びたい」「他の人としゃべりながら学びたい」「頭の中で創造を膨らませて芸術的な観点から学びたい」というタイプで、40分授業ごとに頭を切り替えて、いつも集中できるタイプではありません。
子どもの学び方のスタイルを知らずに、家庭や社会では「学校に行きなさい」とか「学校で求められているスキルや知識」を子どもたちに押し付け続けると、子どもたちは次第に窮屈になり自信を失います。
その結果2次障害といわれる不安や鬱、不眠などを発症してしまうこともあるのです。もちろん、他の複雑な要因が絡まりあっていて、単純には説明が付きませんが、そもそも、「学び方にはいろんなスタイルがあるよね」という認識が社会に欠乏しているようです。
文科省の調査では通信制高校に進学する生徒が20万人を超しています。出生率が今の40代50代が子どものころだった1970年代から比べると現在は赤ちゃんの数が50万人も減っています。少子化にもかかわらずここ数年で通信制高校に進学する生徒は2万人も増えました。
つまり潜在的に小学校中学校でも、進学する際に伝統的な学校以外の学びの場が合う生徒がいるということです。高校になれば通信制、定時制を始めとしてフリースクール、サポート校、など選択肢がぐんと広がりますが義務教育においての教育の選択肢は塾や一部のフリースクールに頼っているのが現状です。(データは内閣府の資料から引用)
4年前に教育機会確保法が成立されました。「子どもにとって大切なのはどこで学ぶかではなくて何を学ぶかである」という視点を持ち、子どもはどんな風に学ぶのがベストなんだろう、とかどんな環境だと安心して学べるのか、と大人が見極めて、情報を子どもに伝え、子どもに選択させる、一緒に考えるという方法を提案します。
文科省が目指している「主体的・対話的で深い学び」は、学校以外の学びの場でも実践できることをもっと多くの方に知っていただきたいです。
最後に:マインドフルラーニングの目指す親子関係の土台/学習スタイルの使い方の4つのステップを紹介します。
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一番最初に、親子、生徒と先生の間で安心安全の関係を築くこと。何を言われても否定されないという安心した関係であること。
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2つ目に、子どもを観察すること。「どんなタイプなのかな?」「どんなことに夢中になっているのかな?」
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3つ目は学習スタイル診断を受けて、その子の強み、才能、興味関心や、Gift(生まれ持って与えられている贈り物)を発見しよう。
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4つ目はどんな子どもでも、子どもの成長と可能性は無限大であると信じること。
そのために学習スタイルをベースに、子どもに合った学び方や教育方法を、探し、試し続けることを伝え続けていきます。