子どもがまんべんなくお勉強するタイプではなかったら、ドイツのマイスター制度のような進路を検討してみませんか?

ドイツでは小学校5年生の年齢で、大学進学コースか、職業訓練コースか、義務教育課程を選択できる教育制度があります。一方で日本では「受験勉強」を身につけることを目標としているかのような教育が主流です。

自分は何者で、どんな強みがあるのかわからないまま、高校卒業前後に突然「大学で何を勉強したいか」とか「将来何になりたいか」と大人から問われて戸惑うのは無理もありません。その時に明確に「医者になる」、とか、「歯科技工師」になる、とか「地質学を学びたい」、とか分かっているのは幸運な一握りの人です。

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高校卒業まで実に12年間、「受験勉強」が合わない子どもも、それらができるようにと教育され続けます。出来ないことをできるようにする努力が称賛され、何の疑問も持たずに、いい大学、いい成績、高い偏差値、というレールを敷きがちです。

「お勉強ができないことには将来困る!」という価値が暗黙のメッセージとして子どもに伝わり、子どもが自分らしく居られずに、親子関係が悪化したり、体調を崩したり、最後には家に引きこもってしまう現象を私は見てきました。

この記事の提案は、「年齢の早い段階で子どもの資質や得意分野を見極めて、子どもに合った進路を考えていこう」です。「本を読むよりも手を動かしてモノづくりをしたかった」子どもが、早いうちから自信をもって得意な分野に進み、その道のスペシャリストやプロの準備をすることができます。

「今」から子どもの強みを観察し、それにつながる進路や方向性の可能性の探索を開始するのはいかがでしょうか。

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ドイツの教育制度は小学校5年生から、大学進学のコース、工業系か手工業系の3択があります。例えば工業系は高校卒業までの5年間、手工業系は6年間の実学を学び、マイスター準備コースで更に技術を磨き、職人プロとしての国家資格、「ゲセレ」を取得します。

大学の年齢でプロとして働き始めてもよいし、更に専門性を磨いて「マイスター」という職業プロとしての最高位の国家資格を取得することもできます。

因みに、大学進学コースから職業訓練コースに変わることも、滅多にはないようですが、職業訓練コースから大学進学コースへ変わることも可能です。実際にそのことを「滅多にやらないようなチャレンジを選んで努力ができる」というアピールポイントとして私の運営していた学校の採用面談に来たドイツ人女性が話していました。

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高校を卒業してから専門性を追求するのでは遅すぎるのは、スポーツ界ではバレエダンサーやサッカーなどのプロの世界では有名です。

ピアニストやバイオリンなどの芸術の世界でも早期教育が重要と言われています。子どもの得意なことを見極めるには、難しいと思われるかもしれません。一つの方法として、放っておいても時間が忘れるほど熱中していることをじっと観察し続けることです。

「好き」や「得意」が、大人になってからの土台となり軸になり、将来につながる可能性になります。最近では各種専門学校が中学卒業の年齢で専門性を学べるように、次々と「高等部」を作り始めていますので情報収集をしておくとよいでしょう。

そのような学校では、専門学校と同じカリキュラムを高校生のうちから学びます。高校卒業の資格は提携している通信制の高校のカリキュラムを受講するという仕組みです。

その結果、専門性については、高校の3年間をかけて2年制の専門学校と同じカリキュラムを学ぶので高校卒業時には専門学校生よりも技術的な質が高くなる、と学校説明会で聴きました。

思えば日本には伝統工芸を引き継ぐ「職人」が昔は溢れていました。職人が社会から期待される能力はどんなことでしょうか?挨拶、コミュニケーション、そして成績の維持、すべて満遍なくできることでしょうか?そうではなく技術に熟練していれば十分社会に貢献できているのではないでしょうか。

我が子が満遍なく学ぶことが得意なタイプではないことが分かったら、喜びましょう。これからの時代は、環境の変化、少子化、グローバル化、など多様な人たちと答えのない問題について取り組み、自らが自己解決していく時代です。

その時に私たちの支えになるのは「自分が好きだ」とか「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感を持つこと。そんな大人になってもらうことです。

まずは何を言っても否定されないとか、失敗をしても許される親子関係であること。そして学習スタイル診断で子どもの学び方を発見すること。彼らの特徴を受け入れた後、学び方を一緒に模索し続けることが大事だと考えます。

学び方を模索する中でいろいろな教育の選択肢を大人が情報を集め、わかりやすく子どもたちに伝えていくことは私たちができることの一つです。ドイツのマイスター制度のように早いうちから子どもの得意に基づいて進路を考えてみませんか?


*10歳で子どもの適材適所が限定されることの是非は議論がなされるところです。この記事では、その可能性を含めて子どもを観察しサポートしましょうということを目的に綴りました。