ある親御さんが子どもの診断結果を見て、普段親から見えている子どもの様子と、診断結果に乖離があると感じ、あらゆる可能性について考えて解説に臨まれました。

前回の記事に書きましたがお子さんの場合は、「いつもの自分」ではなく、「なりたい自分」が診断結果に出ていたり学校や家庭で求められている学び方が結果に反映されていることが多い傾向にあります。日本の教育では、「あなたがしたいことは何?」と確認をして育てる文化よりは「周りに合わせる」ことを重んじる文化があります。また親御さんの場合は問題を抱えている子どもに寄り添い、どうにかしようと解決方法を考えて奔走されている場合は本来の自分らしい気質ではない、問題解決の「発明型」が突出することもあります。ですので診断結果に乖離があることは決して悪いことではなく、環境的にも自然なことです。
 
Aくんは、インタラクティブな学校環境で「表現実行型」が突出していましたがよくよく話を聴くと、全く違う気質だということが分かりました。
Bさんは、IBの学校のやり方を長年学んできたので構造化できる学び方、「組織遂行型」が高かったものの、自分らしい学びをしてもよいとわかった途端に、他の気質と入れ替わりました。
こういう現象は、小学生から大人まで、起こります。
 
結果が自分らしくない場合は、解説コーチングを受けるときになんとなく違和感があり、お子さんとの会話は弾みません。
まるで「また決めつけられるのか」とでもいうような態度のこともあります。これまでの経験から言うと自然なことなので、特に気にかけずにコーチングに徹します。
 
どの気質にも「良い悪い」や「正解不正解」がないことを伝えます。そして「自分らしいですか?」と一つ一つ聞いていくことでコーチからの指摘ではなく、自分で気が付くと理解がぐんと進みます。段々と自分を発見して生き生きとする様子が画面を通して、声の感じからも伝わってくることが一番嬉しい瞬間です。
 
学習スタイル診断を受ける前につい大人は考えています。
あの子は、
「一つのことにとことんこだわる価値を持っている」、
「一人で勉強してほしいのに、いつも誰かの周りにいる」、
「プロジェクト型学習は苦手なようだ」、
なんとなくその特徴が分かって、これまでの自分の経験値で解決したり関わります。
 
学習スタイルの診断結果を可視化することで、
「発明型は不思議に思って解決したいから、一つのことを掘り下げたいんだ」
「人と話しながら学ぶ関係影響型だから、おしゃべりに付き合おう」
「組織遂行型は、教えてもらう方がやりやすいんだ」
などとアプローチが全く変わります。
 
「○○が出来ない子」
ではなくて
「○○の学び方が得意な子」
という180度違った観点でみることができるようになるのです。
 
また最近の学習スタイル診断の解説コーチングで気を付けていることがあります。それは急速に「探求型」の学びが教育業界ではもてはやされているから「探求型に憧れている」、という診断結果が見られることです。社会の風潮やその学び方が「良い」という親の物差しが時にその気質でない子どもを苦しめています。
 
コロナを象徴として、答えのない問題に次から次へと直面する世の中には自分で考え、解決し、周りと協同し、ロジカルに伝えることが「よいこと」とされています。わたしもかれこれ20年以上、レクチャースタイルではなくてPBLでプロジェクトで単位を取っていく生徒とコーチングという手法で伴走してきましたので、探求型の学びには限りない可能性があることは身に染みて理解しています。
 
ただ私はこれまでも学校の学びを必ずしもすべて変えるべきだ、と思ったことはありません。なぜなら、その方法が一番自分らしく学べる子どもたちも一定数見てきたからです。「学校はダメだ」、というよりも「教育に選択肢を増やそう」、という視点で活動をしている大きな理由はそこにあります。探求型が合う子どももいれば、レクチャースタイルでよく学べる子どももいる。自分に合った方法で学ぼう、そのために選べるように教育方法に選択肢を増やそう、という信念です。そこに介在する大人はできればティーチングだけでなく、コーチングやカウンセリング、アドバイスを使い分けられるコミュニケーションスキルがあるとよいのは確かです。
 
「先生から教えてもらう」とか「ルーチンが好き」「目標を立ててコツコツと取り組むことができる」「指示に従うことが出来る」という従来の学校の学び方で合っている子ども、大人もたくさんいます。それが強みで、会社が一丸となって利益をあげたり、プロジェクトが滞りなく遂行したりしています。
 
冒頭の親御さんのお子さんは、学校スタイルが合っていて、学校では重宝され、リーダー役にもかかわらず、その気質が一番低いという結果でそれとは真逆の気質が一番高く出ていました。周りがつい「探求」とか「プロジェクト」という中で、「それがイイ」とか「それでなくてはいけない」、というメッセージを大人が子どもに発信しているのではないか、と解説コーチングで伺いました。
 
ある時、発明型の気質の高いお母さんは言いました。
「今世間でいう探求型の学びは、私が小さいころからずっとやっていました」。
 
つまり、昔から発明型の子どもはいて、そういう子どは教えられなくても勝手に楽しく、自然に探求をしています。逆に、学校のやり方が合う子どもはどの時代にもいて、自然とその学び方で学んでいるのです。
 
繰り返しますが学習スタイルに、良い悪いはなく、ただその学びが自分らしいだけ。その違いをどうやって尊重するか、がコーチングの介在するポイントなのです。
 
わたしは「表現実行」と「発明型」そして「組織遂行型」がトップ3なのですが、「真反対な気質が混在しているので矛盾を感じることがありませんか?」とアセスメント開発をした米国のお二人に聞かれたことがありました。私自身は状況に応じて、今はこの気質を発揮している、と認識することでより強みを意識して過ごすことが出来ています。
 
あなたの子どもにピッタリ合った学習スタイルを発見してみませんか?
結果が出てもよい悪いはありません。ただ「その子らしい学び」があるだけなのです。