APUアジア太平洋大学の学長出口治明さんの最新書籍を紹介する。この書籍は大学の紹介というよりもこれからの時代を生きる子どもたちにどのような教育をしていけばよいか、何が教育の本質か、を改めて考えるきっかけになる一冊となるる。とがった個性を持つ子どもを育てるには「好きなことを徹底的にさせて失敗しても怒らない。むしろその挑戦をたたえるに尽きる。」と書いてある。

舞台は出口さんが2018年1月から学長を務められている留学生が半分在籍をしている別府の大学、APUアジア太平洋大学。「尖がった学生」を集めているこの大学を初めて知ったのはオンラインハイスクールの一からの再出発で奮闘していた2010年ごろだった。

帰国子女だった在校生のA君が進学先として希望したので大学の担当者とやり取りの過程で、そのオープンマインドに驚いた。というのも当時は「オンラインハイスクール」と聴くだけで大学受験の資格がないと出願すら断られる大学が多かったからだ。何とか多様な学びで育った生徒たちを大学に進学させたくて受験期には大学入試課に電話をする日々の中、APUは学校のポイントを確認してからAくん自身の学習履歴に興味を持ってもらえたのだ。その後、ザンビア人のBくんが進学し、そして数年前に帰国子女だったCくんが入学。学校にも説明会に2度ほど来ていただいた。

お話を聞く度に「天空の大学」と呼ばれる広大なキャンパスや温泉街の別府市との地域で学ぶ環境は自分の想像を超える価値観に出会えるに違いない!と「自分が大学生だったら進学したい大学だ」と心から思った。

かくして我が子の大学進学の出番がきた。こどもは幼少期のアメリカ時代から典型的なアメリカンで自分の意見があり、納得しないことに関しては目上の人でもとことん対話を求めるタイプ。お友達は男の子から女の子まで、白人から移民の子どもまで、誰とでも仲良くなっていた。日本に帰国してから「個性を丸くする」という公立の小中学校の環境下では残念ながらその良さが発揮されなかった。どう著書の中にもあった、

  1. (学校の成績を上げることよりも)好きなことに夢中になる
  2. (社会常識や先生の言うことを素直に受け取らず)なんでも疑う
  3. (我慢しないで)やりたいことをやる
  4. (周りに合わせずに)」自分の道を進む
  5. (先生のいうことに従わず)におかしいと思ったことはおかしいと口にする」

という自分をしっかり持っている頼もしい子どもだったのだ。アクティブラーニング最先端の私立高校に進学し、学習環境に期待をしていたものの日本のいわゆる「トップ大学」のための受験勉強が主体の教育方針に本人が疑問を感じ、NZに一年間留学。留学中は、ホームステイ先のファミリーと夜通し語り合ったり、学校ではJapan Dayを企画したり、サッカーで活躍したりと本人のやりたいことを応援してくれる環境で満足して帰国した。

帰国すると同時に高校を辞めて最終学年で私の運営するオンラインスクールに編入し、模擬国連やNHKのジューダイに出演するなどやりたかったことを一気にやりつくした高校3年生だった。進学先を選ぶときに海外の大学進学を強く希望していたので家庭が出せる学費の限界設定をした上で、海外大学を含む選択肢のリストを渡した。そしてタイミングを見計らって3月に行われたAPUの東京の学校説明会に誘ってみた。APUの学校説明会は在校生と卒業生が英語も交えたプレゼンテーションがある。学生の生の声を英語で聞いてすっかり魅了され、説明会後に卒業生に話しに行き、意気投合していた。本人らしい笑顔を久しぶりに見た思いだった。その後7月の別府キャンパスの説明会にも参加し、AO入試で「英語基準」と「活動重視型」のダブル受験を決意した。



入学してからの子どもの変化は目を見張るものがある。これまでは「飛び出た釘」で肩身の狭い思いをしていた様子と打って変わって日本語も英語もできるので日本人と留学生の両方から頼りにされたり、人生について、夢について、恋愛について、同じ熱意で夜通し語り合う国籍の様々な友人ができたのだ。時折かかってくるライン電話でもよく親の話も聞くようになり、意見が食い違っても、「そういう考え方もあるね」と俯瞰している様子も見られるようになった。

夏には海外の友人たちを連れて自宅に戻ってきて、久しぶりに大学生と話ができたことやイスラム教向けのハラールの食事を用意することで親もちょっとした異文化体験を楽しませてもらった。

大学一年目で学生団体に入り、別府と留学生を結び付ける地域貢献活動は内閣掃除大臣賞を受賞した。学びたい学生にはとことん学びの環境を用意してくれる大学なのだ。保護者として大学の教職員の皆様とも交流をする機会があり、お会いする一人一人が学生目線なことが皆さんの態度や言葉からビンビンと伝わってきた。わたしがオンラインハイスクールで働いていた時に感じていたあの時の情熱と一緒で懐かしい感じさえしたのだ。

 

そんな大人たちに見守られて学生たちは過ごしている。在学中に本当に好きなことを見つけるために休学を勧める大学は他には聞かない。今はコロナでどの大学もオンライン授業に力を入れているがまたあの学び舎に学生が戻ってくる日を私も願っている。

著書にもあったが、APUはこれから「答えのない問題」に直面する社会に出る際に必要なソフトスキルや起業家スピリットが培われる、多様な価値観に触れることが出来る大学だ。学長の出口さんは一度お会いすると物腰の柔らかさと鋭い視点にすっかり魅了される。天空の城、ならぬ天空の大学に足を運ばれることを勧めたい。そこは世界の縮図、生きた学び舎なのだ。この書籍は教育関係者の方、保護者の方にはぜひ読んでほしい一冊であり、オンライン大学説明会なども開催されているので気軽に申し込んでみてはいかがだろうか。詳細はこちらから