高校受験を控えている子どもの進路説明会と早期AO入試に明け暮れた週末だった。少子化にも関わらず、ここ10年で通信制の学校の入学者が倍以上に増えていることがA学校の実績をみても明らかだった。世間一般の学校選びの意識がずいぶんと変わってきているのだろう。もし子どもに合った進路選びに迷っていて、どうにかしたいと思っているご家庭があったらぜひ参考にしてほしいと思う。「普通科の全日制」だけが進学先の答えではないということを。

元々わたしの子どもの一人は「満遍なく学ぶ」とか「授業を聴いて学ぶ」という学びの環境では長所が伸びないタイプだ。字を書くことに苦手感があり、音読がたどたどしい様子を見て、幼いうちから特性について観察をしていた。そこで決めたのだ。「何があれば、そしてどういう学びがあればこの子は自立ができるだろうか」を基準に育てると。

例えば自己肯定感を育むために苦手の克服にそれほど力を入れずに、視覚から学べる体験的なクッキングコースに行って成功体験をさせることを意識した。プロさながらのパンやお菓子を作って、美味しいと周りに褒められて、うれしそうだった。小学校の低学年では、口の立つ女の子たちに対して言葉で表現ができずに手を挙げてしまったことがあったが、それほどひどいいじめにも合わずにマイペースに好きなことでつながるお友達に恵まれてきた。わたしがフルタイムで働いていて時間がなかったことや、まだ他に2人の子供がいることもあって苦手な漢字を学年レベルまで覚えさせたり、宿題を100%終わらせることを強要したり、音読の練習をさせることに固執してこなかった。その結果自分の得意なことを知り人とも付き合えるいい子に育った。個々の進度に合わせて進めることができる公文にも通っていたが、先生には「宿題はしません」と親が宣言をして、公文の時間で子どものペースで学べることが大切だと伝えてきた。そしていよいよ高校進学だ。大人になって一人で生きていくための自立を促すための大きなステップなので学校選びも慎重だ。専門に特化するか、選択肢を残した教育を続けるか。

今回学校説明に参加したのは北海道に本校のある通信制高校の東京のサテライトキャンパスだ。芸術科目が必須科目なので、得意な単位で良い成績が取れるというシステムを導入している。コースは声優、アニメ、美術、ビューティー、美容師、など多様だ。講師はすべてその業界の現役のプロが教えてくれて、午前中は教科学習、午後は芸術専門科目というカリキュラムである。13年前に開校され、当初は全国で600名ほどの在校生が2013年には1000人を超し、2014年には1400名に。そして今年の4月は全校で1690名の生徒が在籍しているという。校舎に生徒が入りきらなくなってきて今年の定員は前年よりも少なく50名募集。しかも、昨年は1月には定員が達したので募集を早期に停止したという。少子化にもかかわらず、在校者数が10年前に比べて2,5倍以上に増えているのは、普通の学校教育の限界を各家庭が感じていて、「お勉強は好きではないけれど、すごく好きな分野がある」という子どものために積極的に専門性を16歳から追及させようという姿勢になってきたからだろう。思えば日本は昔から職人がいて、彼らは何かに特化していてそれで職業が成り立っていたわけで、決して「満遍なく」学ぶ、を期待されてはいなかった。その流れから考えるとこのような学校の入学者数がうなぎ登りなのは自然と言える。それらの学校に行きつくのは親の情報収集能力と、意識改革にかかっている。

専門性を高めるような通信制高校の進路は、芸術系大学の進学、その道のプロ、や就職の3パターンがあるという。選択肢も多様なのは魅力的だ。肝心なお勉強に関しては中学からの振り返り学習やレポート提出のサポートがある。年に一度のスクーリングは5泊6日で自然豊かな北海道の地で学ぶのも楽しそうだ。

このように個を伸ばす学校はいいとはわかっていても家庭として一番知りたいのは学費だろう。専門学校並みのスキルを覚えられることと高校の単位を履修するので、全日制の倍くらいの学費だと思ってほしい。就学支援金や、都道府県の無利子の教育奨学金などが利用できる家庭であればうんと利用しやすくなるはずだ。

ところで話を冒頭に戻すと、A学校説明会の翌日はB学校のAO入試だった。GW前後には体験入学を2回済ませて、願書を提出。6月のAO入試は珍しいが、「本気」で進学したい生徒を早く確保して、夏休みからは月1回の実習を始める。入学までの助走期間として子どもたちの熱を高めるのだ。AO入試には内申も学校からの推薦状も必要がなく、志望理由書と体験入学に参加した実績と入学考査料を支払って申し込める。試験は面接のみ。志望した理由、中学校の登校日数や日々の過ごし方の様子、将来何になりたいか、この学校で何を学びたいか、を聴かれたようだ。合否は2週間後だが、この時期に一つの学校でも決まると本人の心持は随分楽になるだろう。

さて、ここまでを読んでくださった読者に問いたい。これから新しいビジネスが台頭し、不確実な将来に生きていく私たちの子どもたち。幸せな自立を子どもに遂げてもらうためにあなたは親としてどのような準備ができるだろうか?何に耳を貸してどんな信条を手放すか?子育て3人目の高校進学ではあるが一人一人違うので楽しい。まだまだto be continuedである。