子どもが学校に行きたくないと言ったら対話の実践 後編

2:一緒に考える
第一ステップの「原因追求ではなく共感」で話を聴いた後は「これからどう過ごすか」を子どもと一緒に考えてほしい。ポイントは3つ。1:選択肢を示して選ばせる、2:限界設定をする、3:親の価値観は伝える、だ。一緒に考えるポイントの重要なことは決して親が子どもの「過ごし方」を決めてはならないことだ。長い目で見た時に親が決めて子どもが従う弊害は2つある。1つは子どもが自分で考える機会を逃すことと2つ目はうまく行かなかったときに親に責任を求めて自分で責任を取るということを子どもが学ばないことだ。ただ、子どもの情報収集力や経験値は大人のそれに比べて限界があるので、子どもに合っていると思われる方法を「選択肢」として提示して子どもに選ばせてはどうだろうか。親は情報収集と情報提供者としてのサポーターになるのだ。

枠は大きく持とう!


価値観と限界設定:その際に、親の価値観や希望は理由を添えて伝えてほしい。「将来の自立に必要になるので義務教育の学力はつけてほしい」、「学校に行かなくても社会に貢献できる人になって欲しい」「家にいてもいいが規則正しく生活をしてほしい」などである。また過ごし方の話合いの際に限界設定をすることが大切だ。お金は際限なく使えるものではないこと、法律違反はいけないこと、20歳には自立してほしい、など大きな枠を設けておくとよい。「例えば朝絶対に7時までに起きること」とか、「早慶に進学してほしい」など、限界設定は狭めないほうがいい。

学校に行かなくても家で取り組めることを本人に考えさせた


我が家の場合は、小学校2年生の時に「学校休みたい」と子どもが言ったことがある。理由は問わずに「学校を休みたいのは理解した。他のみんなは時間割があってそれ通りに勉強をしているけれど、あなたはどうする?あなたなりの時間割を作ってみたら?」と提案した。嬉しそうに時間割を作っていた。親から見ると、一科目の時間が長い時間割だったが、任せて出勤した。帰宅後に目にしたのは笑顔。予定より早くお腹が空いたのでお昼ご飯を早めに作ったとか自分で決めたことを実行したことを楽しそうに教えてくれた。それを2日も続けると「家にいるとつまらない」とまた学校に行き始めたことがある。「学校に行くこと」は正解ではないかもしれないが、ポイントは正しいかどうかではなくて、子どもは自分で選んだことを責任もって遂行し、体験した結果、答えを自らが出したことなのだ。
ここで更に子どもと一緒に考える際に「学校に行きたくない」という原因が出てきた場合についてその対策を考えてみよう。まずは子どもがいじめに合っている場合、そして学校の勉強のやり方が合わない場合、次に先生とそりが合わない場合とその他の理由(疲れた、病気が続いた、理由不明、なんとなく)を想定してみた。

家は安心安全基地!


いじめの場合:
家庭が安全基地であることを伝える。マズローの欲求段階説の項目で説明したとおりに、子どもは「安心」を感じないと意欲がなくなり行動ができなくなる。「お母さん/お父さんは何があってもあなたの味方だから」と伝えて、担任にまずは共有する。いじめの当事者の家族と話して円満解決をしたこともあるが、それは稀であろう。いじめてしまう子どもは実は親子の関係がよくないことが多い。親が子どもを本当の意味で理解していないので「うちの子に限ってそんなことはしない」という対応をすることがあるようだ。学校に対策を求めたり一緒に考えるという方法もあるが、一人の担任に対して35人の学級でできることは限られている。いじめ問題は何十年も続いているが、常に新聞などで報道されている理由の一つは、今の学校の制度下では担任や他の先生の力で解決できることは限られているということだ。つまり、家庭が防衛策をとって自分たちで子どもの自尊心(自分を大切にできる心)や自己肯定感(自分はこれでいいんだ!)、自己効力感(自分はできる存在なんだ)!を守ることが大切である。

いろんな学習スタイルがある!


学校の勉強方法が合わない場合:
米国発の「学習スタイル」で言うと、学校の【目標を立てて計画を立ててノートを取って暗記して反復してという方法】に合うタイプは5つのうち1つの「組織的遂行型」だけである。また勉強ができすぎる子どもも、授業に追いつけない子どもも、授業は本人にとって実りのあるものではないことが多い。サポートルームという特別支援の教室で、ゆっくり教えてもらったり、先取り学習をさせてもらったり、コミュニケーションスキルをアップするのも一つだ。またWISCCなどの知能テストを受けて根拠を示し、合理的な配慮を求める。例えば電卓を使わせてもらう、IT機器で板書を取らせてもらう、など相談することは可能だろうが、それらを教師が理解して環境を整えても生徒同士で理解がなければ元の木阿弥であるので慎重に対応したい。我が家の場合は学校ではできることには限界があるので、放課後の過ごし方を工夫した。本人らしさを発揮できて成果が見えやすい大人と一緒のクッキングクラスに通ったり、得意分野を伸ばせるような習い事をさせた。


担任や部活の顧問の先生とそりが合わない場合:
「社会に出たらいろんな人がいるので最大一年間、社会勉強だと思って我慢しなさい」というのは大人の論理である。子どもの話を毎日よく聴くこと。親ができることは先生を批判せずに「あなたはそう思っているんだ」という共感を込めて聴くのみ。それであなたはどうしたいの?と一緒に考えよう。

その他の理由:
疲れた、病気で長期欠席が続いた、理由が不明、何となく行きたくない場合も傾聴、共感、観察をしてから、一緒に考えるステップを踏もう。ここでは詳しくは書かないが、食事の摂りかた(血糖値を乱高下させない方法)に変えたりすると落ち着くことがあるようだ。

3:学校と良好な関係を保つ
2017年2月に不登校対策の一つとして教育機会確保法が国会で施行された。小中生の子どもの数は少子化で減少しているのに不登校数は増え続けている。そこで法律で初めて「学校を休む権利」や「学校以外の学びの場所の重要性」について言及された。つまり、子どもが学校に行かないのは休養のためにはOKであるということを法律でうたっているのだ。学校に通い続けるにしても、他の選択肢を選ぶにしても、学校とは良好な関係を保つことは勧めておく。子どもは親の態度を見習いながら価値観を育むので、「相手が間違っていると思ったらクレームを言ってもよい」とか「文句を言ってもよい」というメッセージは与えたくない。学校と良好な関係を持っていれば、子どもが部活だけ参加する、給食だけ、行事だけ参加する、、という柔軟なかかわり方もやりやすくなるだろう。信頼のできる先生を一人は作っておいてコミュニケーションをとっておきたいものだ。最後に家庭で行う「対話」について紹介したい。ここ一年で急速に教育界で取り入れる動きのある「哲学対話」。これを家庭でも実践しようという提案である。


4:対話を重視する。
対話とは、批判的、反省的、論理的ではなく、一貫性のないものである。つまり自由に話し、相手の発言を評価・分析をしない、まとまりのない会話のことだ。なぜその手法が広がっているかというと、私たちには「自由に話す場」がなくて、その場にふさわしい発言を求められてきたからだろう。これは自分で責任を持った人間には育ちにくく、相手の期待に応えるように育ってしまう可能性がある。そこで多様な人たちと自由に話すことによって他の人の視点や価値観に気が付かされる。それが本来の教育の一部であったはずだ。対話には正解や結果を求められないので、参加者は「問い、考え、語り、聴く」ことになる。そこには上下関係が存在しない。対話をした後も結論が出ないので「もやっと」した感じが残る。部屋に戻った後自分でまた考えることになる。思えば学校教育では「正解」を求められるが社会では「正解」があるほうが少ないのではないか?それだったら「学校に行くのはなぜか?」「何のために勉強するのか」ということについて家庭でとことん対話をしたい。対話の際のルールだが、「何を言ってもよい、相手の発言に否定的な態度を取らない、知識ではなく経験に基づいて話す、話がまとまらなくていい、意見が変わってもいい、わからなくなってもいい」を心がけるとよいだあろう。(考えるとはどういうことか0歳から100歳までの哲学入門梶谷真司著参照)この記事で一貫して伝えてきた、原因より共感、一緒に考える、、は実は「対話」の流れでもあるのだ。

最後に:「学校に行きたくない」と子どもが伝えてくれたら、親はパニックにならずに子どもの力を信じよう。何か違うと感じて伝える力があり、嫌なことは嫌だと分かる子なのだ。何十年も前から欧米諸国ではホームスクールやプロジェクト型の学校など学びの選択肢があった。グローバルな目で見ると「学校に行く」という選択肢以外をとっている家庭は数知れない。学校に行きたくない、、というメッセージはひょっとするとこれからの時代を生き抜く子どもたちが発する見逃してはならないメッセージなのだ。だからあなたがこれまで生きてきたようにきっとこの子も生き抜いていけるという可能性を信じて、伴走してほしい。そして、親だけでは一杯一杯になり行き詰りそうだったら迷わず信頼している友人や自分の親などを頼ろう。一人で抱え込まないで学びの場に出て学んで仲間を作って欲しい。親が自らも学ぼうと思うことが何よりも大切である。

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